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2008年06月27日更新

ニコンD3を作った“コンセプター”の隠れた手腕

文●鮎川哲也(大空出版)

コンセプターはいい意味でのオタクであれ

 川路さんは写真を撮ることとカメラが好きで、1993年にニコンに入社した。メカの設計を9年間担当し、その後2002年に現在の部署であるマーケティングに異動になった。設計の部門にいた時は銀塩カメラの上位機種を担当し、そこでカメラや撮影に対する知識を深め、開発の経験を積んだ。それが、現在の仕事に生きているという。

「設計を担当していた時からずっと、ユーザが使ってみて『なるほどこれはいいね』と深く納得できる製品を作っていきたいと考えています。そのために、マーケットの調査をまとめて、説得力のある資料を作ることは必須です。しかし、机の上で考えられたデータや資料だけでは判断できない感覚的な部分を、できるだけ深く製品開発に結び付けていくことが、多くのユーザから評価をいただけるプロダクトには不可欠だと思います。カメラはシャッターを押した時の感覚や、レンズの写り具合など、ファジーな(あいまいな)部分が多いので、特にそうです。例えば、自動車にほとんど乗らないペーパードライバーの作る自動車には、誰も乗りたくないですよね」

 ユーザがいいと感じるのは、自動車を使い倒しているぐらいの人が真剣に考えて作ったもの、というわけだ。それはカメラも、そのほかのプロダクトも同じだだろう。

 最後に、川路さんにコンセプト作りをしていく上で、大切なことを聞いた。

「いいコンセプトを作るには、いい意味でオタクであるべきだと思います。その分野が好きで、常に使う立場や買う立場で考えていることで、鍛えられる専門的な知識と経験があります。その知識と経験を土台に、多様な顧客要望の核(潜在意識)をつかむことができる感性も大切です。その上で、ユーザの意見、社内識者の意見、現状の技術力、開発力、進化のスピード、そして自分の経験を材料に、企画をバランスよく組み立てられること、企画をメンバーと再検討し、さらにブラッシュアップする『企画のスパイラル』を回せること、最終的に『これでいく』という決断を明確に下せることが大切になるでしょう」

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