2009年07月14日更新
「ITスキル標準」とは何か?
では、ITSSをものさしとして使うためにどういったドキュメントが提供されているのだろうか。
ITSSのドキュメントは、大まかに「概要編」と「キャリア編」、「スキル編」の3つに分けられている。これらはさらに複数の文書から構成されているが、中でも重要なのが以下の5つである。
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| IPA発行の「ITスキル標準活用の手引き 企業導入の考え方」。ITSSを企業が活用するための勘所が載っている。キャリアフレームワークを、どのように各企業が活用するか? といった点にも言及している |
「キャリアフレームワーク」は、IT業界においてどういった職種、そして専門分野があるのかを示している。ITSSを知っている人の多くが、すぐに思い浮かべるのも、キャリアフレームワークだ。「コンサルタント」や「プロジェクトマネジメント」「ITスペシャリスト」など11の職種と35の専門分野に分類されており、それぞれ1から7までのレベル分けが行なわれている。
それぞれの専門領域で、ビジネスの観点から成果を評価するための指標として定義されているのが「達成度指標定義」である。たとえばITスペシャリストのデータベースの分野において、レベル3で求められている内容を抜粋してみよう。
まず「ビジネス貢献」として求められているのは
プロジェクトのソリューションの設計、開発、運用、保守の局面におけるデータベースの設計、構築の技術チームメンバとして、顧客から要求されたデータベースの要件(性能、回復性、可用性など)を1回以上(レベル3の複雑性、サイズ相当)成功裡に達成した経験と実績を有する。
と記載されている。また「複雑性」として「以下の2つ以上の条件に該当する難易度のデータベース設計、構築を成功裡に遂行した経験と実績を有する」として、「取り扱うデータ量が多くデータベースの構造も複雑」、「データベースやファイルの整合性確保方法や処理タイミングが複雑」などといった項目が記載されている。
この文書が目的としているのは、実務での経験や実績を評価することだ。資格試験で求められるのはあくまでも知識だが、それが本当にビジネスに貢献しているのかどうかは判断できない。そこで達成度指標定義では、実務遂行能力を判断するためにビジネス貢献、そしてプロフェッショナルとしての貢献の2つの観点から人材を評価する指標を提示している。
一方、各々の専門分野において求められるスキルが記載されているのが「スキル熟達度定義」である。達成度指標定義が実勢を元に評価を行なうのに対し、スキル熟達度定義は、その実績を達成するために必要なスキルが記述されている。同じくITスペシャリストのデータベースでは、以下のような内容が記載されている。
いずれも求められる実績が細かく具体的に記述されていることが分かるだろう。さらに各々のスキルは「スキルディクショナリ」によって定義されている。この文書ではスキルを軸にして、それぞれの職種や専門分野で求められる内容を提示している。
こうしたスキル取得を支援する研修において、研修内容などを例示しているのが「研修ロードマップ」である。それぞれの職種や専門分野において、必要な研修内容が記載されており、社員教育の計画策定のおいて役立つように設計されている。
IT産業における職種と専門分野を明示し、さらにそれぞれにおいて求められるスキルや経験が定義されたITSSは、エンジニアが自分のキャリアパスを考える上でのツール、あるいは人材育成という観点で非常に有用であることは間違いない。ただドキュメントが膨大で全容を把握しづらく、誤って利用されるケースも散見される。さらに、現場で働くエンジニアから見ると、作業内容に即していない基準で評価されることに対する不満の声も聞かれる。次回は、こうした問題点についてスキルスタンダード研究所の代表取締役であり、ITSSユーザー協会専務理事である高橋秀典氏に伺う。
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